高校生がつづる 森・川・海 聞き書きの本棚

愛情込めたこんにゃく作り

場所は長野県飯田市。飯田市は長野県の最南端に位置し、東に南アルプス、西に中央アルプスがそびえ、豊かな自然と優れた景観、四季の変化に富んだ地域です。

今回聞き書きするのは、小林文人さん(61)。小林蒟蒻店で20歳の時から約40年間、こんにゃく作りをしています。

当初は家業を継ぐのが嫌だった小林さんがこんにゃく作りのおもしろさを知ったのは、「こういうのができました。お願いします」と初めて新商品を商談に持って行った時でした。そこからやる気も出てきて自分で新商品を作ってみたり、お得意を開拓していったそうです。「商売はタイミングもあるし人脈も大事だなって思いますね。」と小林さんは語ります。

「こだわりは水」

水は、井戸から出た地下水を使っています。水道水は塩素が入っているため、こんにゃくの凝固剤、水酸化カルシウムの量に差が出てきてしまい、美味しさが失われてしまいます。なので中性に近い井戸水を使っています。

「練り屋の心意気」

小林さんは、時代の流れに合わせて商品を値下げするのではなく、「これはこの値段でないと売れませんよ。値下げはしません。安売りはしません。」と言えるようなこんにゃくを作っています。そのために、お客さんにおいしいねと喜んでもらえるこんにゃくを毎日愛情込めて作っています。

「自分で何か商売をするとしたらね、商売ってのは、お客さんを感動させたその対価としてもらうのがお金なんで、お客さんを感動させることを目的に商品を作ってもらいたい。」と小林さんは話します。

聞き書きを行ったのは、愛知県の高校に通う犬飼和志さん。たくさんの面白いお話が文字数に収まらず悔しい思いもしたそうですが、インタビューの書き起こしの過程でどんどん名人の言葉や話している時の表情、おいしいこんにゃくを作るためのこだわりが心に刻まれたと話します。

犬飼さんがたくさんの貴重なお話の中から厳選したという聞き書きを、ぜひ本文でもご覧ください。

 

こんにゃく三代~「バタ練り」のこんにゃくが一番おいしい~

名人
小林文人さん
聞き手
犬飼和志

練ってみないとわからない

芋を使ってると芋によって粘り具合が違うんですよね。こんにゃく芋は種類によって粘りが違うし、おんなじ種類でもできた土地によってちょっと違うんですよね。あと掘り取ったおんなじ1キロのこんにゃくでも乾燥してる方が、水分が少なくてギュッとしまってる状態だから固いこんにゃくになる。そういう点もあるんで、仕込みのときにノリの具合をみて「今日は固いかな、柔やわいかな」で足す水を減らして、600リッターにしようと思ったけど580リッターにしてやめるとか、「結構固いでそいじゃぁもう20リッターくらい増やそう」とかそんなように手加減しながらやってますね。

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