高校生がつづる 森・川・海 聞き書きの本棚

引き継がれる「草木塔」の精神

高校生が取材した地域のひとつ、山形県飯豊町中津川地区(旧中津川村)。ここには人々が先祖から受け継いできた共有の財産があります。それはナラやブナなどの広葉樹を中心とした森林。その広さは約1万1千ヘクタール、東京都心を巡る「山手線」内側の1.5倍以上の面積があります。

中津川の人々は飯豊町に合併した後も、その森林を財産区有林として共同管理してきました。かつては炭を焼き、ナメコを生産し、近年はチップ材として広葉樹を出荷しています。また、各家はその一部を借りて、薪をとること等に利用しました。

伐採したばかりの山は、日当たりが良く山菜の宝庫になります。広葉樹は伐採から1~2年たつと、切り株から萌芽し成長するので、30~40年もたてば元の森林に戻ります。「持続可能」(サスティナブル)という言葉がもてはやされる以前から、中津川の人々は生活に必要な広さの山を伐採し、萌芽更新させながら繰り返し利用してきたのです。

木を伐るときには、山への感謝の気持ちも忘れませんでした。その証として、この地域には古くから「草木塔」が建立されています。草木の霊に感謝し、その再生と成長を祈る。その精神は、イタヤカエデの樹液を集めて特産品のメープルシロップをつくる、現代の名人にも受け継がれています。

そして聞き書きした高校生、江波戸さんは「木は宝」という名人の言葉、そして「限りある資源を使うのなら、最良の方法で」という教えをしっかりと心に刻みました。

木は宝なの。木ぃ切ってしまえば、あと終わりだから

名人
中善寺善三(山形県西置賜郡飯豊町)
聞き手
江波戸彩花(栃木県立宇都宮女子高等学校2年)

採取期間

樹液が溜まるスピードはお天気次第なんだ。冬の寒い季節のなかでも、お天道様が出てあったかい時期だと、木も固まってないから良く溜まる。でも天気が悪いと穴開けたって出てこねえ。(中略)

木さおそらく冬の寒さで凍らないために甘い汁を貯めてると思うんだ。だからそれを採るっちゅうんは、木に対しては悪いことをしてるんだ人間が。だから山の神とかその木の精霊に対して、分けてくださいって感じで謝ってもらってくる。

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