木を山を森を育てていく
奈良県川上村は、面積の約95%を山林が占める自然豊かな村です。室町時代から続く吉野林業の発祥の地で、最高級の建築材と言われている吉野杉・吉野桧の主産地としても知られています。
そんな川上村で高校生が訪ねたのは、玉井久勝さんという林業の名人です。「私が生まれたときには家を継ぐという道筋ができていた」と自ら話すように、代々林業を続けてきた家に生まれた方でした。
雪解けと同時に苗を植えて木を育て、梅雨が明けたら大きくなった木を伐る。秋から春にかけては山から木を運び出す。そうやって玉井名人は、1年を通じて山の仕事に取り組んでいます。そこには、川上村で昔から行われているこんな知恵もありました。「葉がらしといって、伐った木を3ヶ月から1年の間置いておいて、木の中に含まれる水分を葉っぱから蒸散させて、木が持っている水分量を減らします。水分を減らすということは、木の色が良くなって材が軽くなり、運ぶのが楽になるというメリットがあります」
一方で、名人はこんな話もしてくれました。「祖父が植えてくれて、父が育てたのを、私が伐ってお金にするという、長いスパンをかけて育ててきた木や山なので、その成長過程をずっと見てきている」
聞き書きをした岡山の高校生・藤原未央さんは、こうやって長い年月をかけて森を育てている名人の仕事に深く感動したそうです。
500年以上も昔から続いている林業を受け継ぎ、次の世代へと森を残していく名人の仕事を、皆さんも読んでみませんか。
自分の後ろに残っていく仕事
- 名人
- 玉井久勝(奈良県吉野郡川上村)
- 聞き手
- 藤原未央(岡山県立矢掛高等学校1年)
やりがい
私たちは代々やっています。だから自分が管理している山が育っていく様子っていうのが、代々かけて受け継がれています。私の2代前の祖父が植えてくれて、父が育てたのを、私が伐ってお金にするという、長いスパンをかけて育ててきた木や山なので、その成長過程をずっと見てきている。(中略)悪い木を伐って、いい木がいっぱいの山が広がっていく様を、毎日毎年、10年、 20年というかたちで、徐々に育っていく様が見れるということが、一番の自分にとっての生きがいやモチベーションで、やりがいを感じるところです。